Artist Spotlight: Karen Disher

Image Courtesy of Karen Disher

アーティストの情熱によって生まれる日常からの逃避

私たちは、日常生活から束の間離れ、アニメーション番組を一気見したり、ファミリー映画を見ながら笑いあったりすることはあるが、その作品を作ったアーティストにまで思いを馳せることはほとんどない。自分に関わりがあること、共感することにフォーカスしているからだ。アーティストは何を思い、何のために物語を作っているのか。笑いを共有することは、私たちが考えている以上に人と人とを結びつけると、ストーリーアーティストでクリエイティブディレクターのKaren Disherは言う。「そもそも、私がアニメーションにハマったのはそのためです。もともと、絵を描いて自分を笑わせるのが好きだったのです」。

Karenは、ニューヨーク大学ティッシュ芸術部で2Dアニメーションを学び、MTVの『Beavis and Butt-Head』で、ジュニア レイアウト クリーンアップアーティストとして最初の仕事を得る。その後、キャリアで実績を積み重ねた彼女は、そのユーモラスなデザインにより、人気番組『ダリア』のスーパーバイジングディレクターだけでなく、テレビ映画でも監督を務めるなど、アニメーション業界で結果を残し始める。持ち前のウィットとクリエイティビティにより、Blue Sky Studiosで職を得たKarenは、アカデミー賞ノミネート作品『フェルディナンド』、ゴールデングローブ賞ノミネート作品『I LOVE スヌーピー The Peanuts Movie』、『アイス・エイジ3/ティラノのおとしもの』にストーリーアーティストとして携わり、『ブルー 初めての空へ』でストーリーヘッド、アニー賞にノミネートされた『アイス・エイジ クリスマス』では監督を務めた。

  • Blu's Arrival in Rio
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現在は、Spire Studios のクリエイティブディレクターとして、「何かを感じさせるコンテンツをつくる」という、自身の得意とする制作活動を行なっている。「ファミリー映画にふさわしくないようなものでも、笑えるギャグを我慢できずに入れてしまうようなところは、以前からあまり変わりませんね」とKarenは言う。「でも、感動的なストーリーやキャラクターを明確に表現できる技術に対して、感謝の念を抱くようになりました。安易な笑いを求めるより難しいことです。大変な作業ですが、奥深いものを表現するのはとても満足感があります」。

記憶に残る作品を裏方で支えるアーティストに注目し、アニメーション業界でアーティストを目指す人たちに向けたアドバイスやアニメーションの未来について、またそのクリエイティブプロセスを支えるFoundryのストーリー開発ツール Flix の活用ついて話を聞いた。

Q: 作業前、仕事に没頭するうえで役立っていることはありますか。

A: どんな作業をするかによりますが、サムネイルをスケッチしながら新たなシークエンスを考えるような場合なら、書いたり、考えたりの時間のかかる作業ですから、大きなカップにたっぷりのコーヒーと静寂が必要ですね。サムネイルからストーリーボードのコマを描くような作業なら、ノリのいい音楽をかけます。

行き詰まったときは、かっこいいショットや背景を考え出すのに役立つようなアートや写真を探して、Googleで画像検索したりすることもあります。

Q: ストーリーアーティストとしての通常のワークフローについて教えて下さい。

A: 通常はまず、紙にボールペンで小さなサムネイルをスケッチすることから始めます。これが思考/書き込み段階で、シークエンスの概要をまとめるのにだいたい1日程度要します。その後、数日かけてタブレットで編集用のストーリーボードのコマを作成します。

Q: 『ダリア』から『ブルー 初めての空へ』まで、これまで多くの著名プロジェクトに携わっておられますが、最も満足しているプロジェクトと、その理由について教えてください。

A: どれもそれぞれ、素晴らしいと思っています。『Beavis and Butt-head 』は、大きな文化現象を巻き起こしましたが、その一端を担うことができたのは本当に素晴らしいことですし、私もこの作品の大ファンでした。そして『ダリア』は、別の意味でインパクトがありました。この世界に馴染めなかったり、少し違和感を感じたりしている人たちの助けになったと思います。この作品は、視聴者の心に響く、とても意味のある作品に仕上がったと自負しています。

Ice Age: Dawn of the Dinosaurs - Scrat tango sequence

Q: アーティストを目指す人にとって、与えられた仕事に甘んじるのではなく、最初から自分の理想とする仕事を追求することは重要だと考えますか。

A:人それぞれでしょう。私は、その時々で自分にふさわしいと思うことをやってきましたが、他の人にとってもそれが正しいわけではありませんから、自分の直感を信じるしかありません。でも、最近は非常に多くのスタジオが存在しコンテンツに対する需要も多いので、可能であるなら、そうした状況を利用してみる価値はあるのではないかと思います。

大手スタジオでの職が得られなければ、小さなスタジオから始めて、経験豊富な先輩アーティストから学んでください。1日中、丸々1週間、絵を描いているだけで、スキルが上達します。小さなスタジオは素晴らしいですよ。満足できるのであれば、そこにいればいい。最終的に大事なのは、好きな仲間と満足のいく仕事をすることです。

駆け出しの頃に、「理想の仕事」につくことは重要ではありません。ジュニア レイアウトクリーンアップアーティストとしてたまたま働いていたMTVでは、どんな仕事でも、与えられたものは何でも喜んで引き受けました。ストーリーボード、キャラクターデザイン、アニメーション、タイムシート作成、ディレクション、スーパーバイジングなど、MTVではさまざまな仕事を経験することができました。1つのタイプの仕事だけに専念していたらできない、さまざまなスキルを身につけることができて本当に良かったと思っています。

Q: アニメーション業界を志すアーティストに、何かアドバイスはありますか。

A: 私は、アーティストのユーモアや感性、個性を強く感じられるような、パーソナルなポートフォリオを見るのが好きです。授業で描いたヌードデッサンを何ページも見続けるほど退屈なことはありません。モデルを完璧に描いたものよりも、ちょっと変わっていて、面白くて、ユニークなものを見たいのです。でも、これは私の考えで、スタジオやディレクターによって求めるものが違います。つまり、採用されなくても個人的に受け止めないようにしてください。非常に難しいことですが、自分の強みと弱み、伸ばすべきところと改善すべきところを知ることです。フィードバックは謙虚に受け止め、あきらめないことが肝心です。

Q: Spire Studiosでの仕事について、また、近い将来予定されているプロジェクトがあれば教えてください。

A: Spire Studiosは素晴らしい会社です。スタートアップで働くのは初めてですが、小規模で制約のないチームで、皆で腕まくりをして仕事をやり遂げるような感覚が大好きです。私たちが手がけた最初の長編映画 『Trouble』は、今まで見たこともないような世界観の作品で、とても楽しく仕事ができました。今後の監督作品についても、いくつかアイディアを練っているところです。

Rio - Flight Sequence

Q: Flixを使い始めたきっかけと、時期について教えて下さい。

A:私自身は、実は、Spire Studiosに来るまでFlixを使用したことはありませんでした。Spire Studiosでは、設立当初からFlixのワークフローを導入しています。

Q: Flixへの移行についてはどうでしたか。

A: 誰もFlixの使用経験がなかったので、少し学習が必要でした。幸い、問題が発生すると、FoundryのFlixチームが非常に迅速かつ丁寧に対応してくれて、助かりました。

Q: Flixの活用ついて、また特に気に入っている機能について教えて下さい。

A: Flixの最も便利な点は、チームの他のアーティストの作業状況を簡単に確認できることです。他のアーティストのシークエンスを見て、ショットがうまくかみ合っているか確認したり、ロケーションやキャラクターのリファレンスを得たりといったことが行え、コラボレーションには欠かせない機能です。

Karen Disher Quote

Q: ソーシャルメディアや複数のストリーミングプラットフォームの台頭により、長編アニメ映画やアニメシリーズに対する視聴者の期待にどのような変化があったと思いますか。

A: テクノロジーによって、人々が見たいと思う番組や映画が変わったとは思いません。家族連れは、大人も楽しめる子供向けの面白い映画を常に求めていますし、大人向けのアニメーションにも常に多くの視聴者がいます。そしてもちろん、誰もが好きなキャラクターや心を揺さぶられるストーリーに惹かれるのは、人間の性でしょう。最大の変化は、これまでよりもはるかに多くの種類のコンテンツを提供できるようになったことです。どんな好みの人も、自分に合った満足のいく作品を見つけることができます。

Q: アニメーションの未来をどのように見ていますか。

A: 今後業界は、Spire Studiosが使用しているようなゲームエンジンの制作ワークフローへの移行が進むでしょう。その結果、予算が削減され、クリエイティブなリスクを取りやすくなると思います。AIのような新しいテクノロジーによって、どのような映像や世界を生み出すことができるようになるのか、とても楽しみです。アニメーションは、アートフォームとして、またクリエイティブなメディアとして、常に進化を続けているのです。

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