ゲーム版『ゲーム・オブ・スローンズ』のトレーラー制作

世界中で社会現象を巻き起こした一大ドラマ『ゲーム・オブ・スローンズ』が遂に完結し、その衝撃の結末について数々の論争が巻き起こる中、多くの人々の喪失感を埋めるべく、PCブラウザ用ゲーム『Game of Thrones：Winter is Coming』がリリースされました。

8年以上にわたって熱狂的なファンを獲得してきた作品のゲーム版CGトレーラーの制作にあたり、CG/アニメーションスタジオ  RealtimeUK には相当なプレッシャーがあったことは想像に難しくありません。さらに、トレーラーに登場するドラマの登場人物は3Dスキャンなしで、リファレンス画像だけを使用して一から作成されました。

RealtimeUK は過去にも『Jurassic Park: The Game』や『War Thunder』などのゲームトレーラーの制作を手掛けていたものの、『ゲーム・オブ・スローンズ』の絶大な人気が並々ならぬプレッシャーとなる中、Nuke と Mari がプロダクションツールに組み込まれ制作がスタートしました。

一羽のカラスが天空を舞い、ドラマでおなじみのキャラクターと各家の紋章が次々と登場するトレーラーには、ドラマ同様の緊張感が漂います。ディレクターの Stu Bayley 氏は次のように話します。「二つの地点を行き来してメッセージを運ぶ鴉は、戦争に至る経緯を描く役割を担っています。トレーラーはその後に繰り広げられる壮大なバトルを暗示するティーザーとして制作されているのです。」

キャラクターとそれを取り巻くものすべてが驚くほどリアルに再現された世界は、見る者をすっかり魅了します。

「このプロジェクトにおける大きな課題の一つが、厳しいスケジュールの中でビジュアル表現における高い水準を維持することでした。」シニアアーティストの Chris Scubli は言います。

「Nukeのノードベースワークフローにより、ショットの基本的な構成要素のデザイン検討を迅速に行いそれらをショット間で共有することで、制作時間の大幅な短縮につながりました。Nukeは非常に柔軟性が高く、複雑なコンプにも容易に対応することができます。

また、カスタムのツールが簡単に作成できるのもNukeの優れた特性のひとつです。コンポジティング環境で作成したツールをギズモ化し、Pythonを使用してより詳細なカスタム設定が行えます。こうした自作ツールによって、より強化されたパイプラインが完成しました。」

このトレーラーの見所の一つでもあるきわめて精細に作り込まれたキャラクターの表情については、ドラマの登場人物をそっくりそのまま再現するためにNukeとともにMariが使用されました。「キャラクターのリアルな表現を実現するうえで、Mariは非常に大きな役割を果たしました。」シニアキャラクターアーティストのDavid Weaver氏は言います。

「Mariでキャラクターの頭部を複数のUDIMに分割して16bit 16k テクスチャを投影、調整を行ってから、Mariのプロシージャルテクスチャでバリエーションを追加しました。

Warpツールは大変有用で、ディテールを投影してメッシュにぴったり合うように調整することで大幅な時間短縮ができました。」

フォトリアルな表現はこのプロジェクトの目標の一つでしたが、その実現には時間を要しました。Scubli氏は次のように話します。「Nukeのパワフルなショット管理機能により作業工程を一見で把握することができるため、レンダリングの詳細な調整が行えました。Nukeのワークフローは非常に視覚的で、ツールを理解してしまえば多くの作業を直感的に行うことができるため、作業時間を大幅に短縮でき、目指す表現を実現するために試行錯誤を繰り返して目標自体がプレッシャーになってしまうようなことはありません。」

さらに、クライアントからのフィードバックに基づいて臨機応変にコンプの調整が行えるため、レビューとフィードバックのプロセスが簡易化されます。Scubli氏は続けます。「毎回トレーラーが完成する度に、コンポジティング段階をもっとスムーズに進められないものかと考えていたのですが、ほとんどの場合、再レンダリングを行わなくてもNuke内でクライアントのフィードバックにすぐに対応できるようになり、コストの削減につながっています。」

Game of Thronesの世界観を見事に表現したこのトレーラーの制作において、Nuke と Mari はスケジュール通りに作業を進めるうえで不可欠な役割を果たしました。Bayley 氏は言います。「Nuke や Mariのようなツールを利用することで、限られた予算をより効率的に使用でき、アーティストはより多くの時間をショットの改善や調整、検討作業に当てることができるだけでなく、社内あるいはクライアントからのフィードバックにより迅速に対応することができるようになります。その結果、最終的な作品の完成度が一層高まるのです。」

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