映画・TV
シャナラ・クロニクルズ: TVドラマシリーズのCG制作
超短納期下で見事なCG制作を実現したSPIN VFXの成功事例
ウェスタロス上空を火を吐きながら飛ぶドラゴンや、パラレルワールドから突然現れるデモゴルゴンなど、画面に映し出される大掛かりでハイコンセプトなエレメント。
昨今、映画クオリティのVFXで描かれたテレビ番組への期待が高まっています。
こうした大量のCGを使用する番組制作においては、高解像度 CG制作に適したツール選択と短納期についての考慮が必要です。
Calling SPIN VFX と 4K 映像制作
以前、人気SF TVシリーズ『エクスパンス -巨獣めざめる-』の制作にまつわるインタビューに応じてくれた、トロントを拠点とするスタジオ SPIN VFX は、こうした課題を熟知するスタジオのひとつです。
同社のCGチームリーダーであるAndrew McPhillips 氏によれば、ハイレゾ対応家電が全社的に大きな影響を及ぼしたといいます。「モデリングやテクスチャペインティング、レンダリング、コンポジティングから、映写室での編集用フィルムの再生方法にいたるまで、パイプライン全般にわたり高解像度化を余儀なくされ、ライティングとルックデブにも大きな影響をもたらしました。」
「高度な PBR ルックデブ パイプラインを持つわれわれのようなスタジオにとっては、作り込まれた細部にいたるまで表現が可能な 4K は歓迎すべき技術で、他社との差別化を図ることができました。」
SPIN VFX のCG プロデューサー Chris Cox 氏は、高精細 4K 映像への需要の高まりを歓迎しつつも、高解像度コンテンツ制作においては小さなミスが大きなコスト増につながるリスクを指摘します。「4K の標準化が進んでいますが、フレーム数が多くレンダリングコストが高い 4K は、ひとつのエラーが大きな痛手になりかねません。」
このため、SPIN VFX にとって、4K 解像度に対応出来るMari のようなツールの採用が不可欠でした。「テクスチャのテストにはかなりの解像度を必要とするのですが、Mariは私達が必要とする解像度に耐えうるパフォーマンスを発揮してくれました。」
「エラーによるレンダリングコストの増大を回避するためには 、二重、三重の徹底したエラー排除が必要です。ライティングなどの下流の作業工程で無駄な作業をさせる訳にはいきません。高解像度化に伴いレンダリングコストが増加するため、完璧なパイプラインの構築と運用のスタンダード化が必須です。」
シャナラ・クロニクルズ
CGが多用された最新 TV プロジェクト 『シャナラ・クロニクルズ』では 、SPIN VFXの技量が思う存分発揮されています。「『シャナラ・クロニクルズ』は非常に人気のあるファンタジー・ドラマで、撮影はニュージーランドで行われました。『ロード・オブ・ザ・リング』並みの壮大なスケールで描かれたこの作品は、われわれにとって、特に背景制作において実力をアピールする絶好の機会になりました。」
アソシエイトCG スーパーバイザーの Mark Krentz 氏は、時間的制約の厳しいTV番組制作における大規模な背景構築は非常に難易度が高いと言います。「背景のスケール感を表現するうえで課題となったのは制作工程の管理でした。まずはコンセプトアートを元に、時間をかけずにざっくりとモデリング/スカルプティングし、そこにカメラを投入してアセットを構築していきます」
「まずは大規模なトポロジー形状を作成し、クラインアント認証を得られたら形状を分割/抽出してプロキシジオメトリを作成、それを背景に再インポートしてレイアウトを微調整しました。」
「ガイドを用いてフロア全体にプロキシアセットを配置/構築し、後に高解像度ジオメトリと切り替えモデル形状とショット構成の確認を行っています。」
Krentz 氏によれば、『シャナラ・クロニクルズ』の広大な世界の表現には、『エクスパンス -巨獣めざめる-』とは比べ物にならない作業量を費やしたといいます。
シニア ライティング / モデリング / テクスチャ アーティストの Inna Itkin 氏は、Foundry のルックデブ / ライティング ツールセットの活用について次のように話します。「 重いジオメトリのハンドリングもKatana のおかげで効率的に進み、技術的な問題に時間をかける代わりに、アーティスティックな課題に専念することができました。」
実際、Katana は SPIN VFX のルックデブ / ライティング パイプラインの中核を担っています。「私たちは、柔軟性と拡張性がきわめて高いライティング/レンダリング ソリューション Katana を選択しました。」McPhillips 氏は言います。
「小規模制作会社で Katana を採用したのは SPIN VFX が最初でしたが、今では、私たちの作品制作に欠かせない存在になっています。」
「アーティストはライティング / ルックデブ専用のソフトウェアを求めています。複雑なビジュアルに対するクライアントの要求がますます高まる中、Katana は、複雑なシーンであっても技術的な問題に煩わされるようなことがなく、たとえクライアントからの要求が厳しいものであってもクリエイティブなビションを形にすることができます。」
テクスチャリングとペインティングには Mari が使用されました。Ryan Cromie 氏は、複数の UDIM を一度にペイントできる Mari の機能が、精細な背景アセットの制作に役立てられたと言います。「リー王国のダムについては、かなり複雑な作り込みが必要でした。150を超える大量の UDIM を処理し、クローズアップを織り交ぜたショットを構築する必要がありました。」
筋肉と皮膚の表現
背景制作に加えて、SPIN VFX は作品に登場する数多くのキャラクター制作にも携わりました。「私達が持つ筋肉と皮膚の制作パイプラインを駆使して、手間を惜しまず完成させました。」McPhillips 氏は言います。
「ボーン、筋肉、 皮膚の順に、内側から外側に向かってキャラクターを構築していったのです。」
Cromie 氏によれば、キャラクター構築におけるもっとも大きな課題の一つはリアルな皮膚表現とのこと。「リアルな表現を実現するために重要なのはディテールです。Mari では、皮膚の毛穴一つ一つにいたる詳細な情報をモデルに投影し、思いのままに微調整を加えることができました。」
コンセプト スーパーバイザーの Cesar Dacol Jr. 氏は次のように言います。「皮膚は最もダイナミックで表現が難しい部分です。一生を通して変化し続けるため、その動きを完全に理解するためには長い時間が必要です。」
「私たちは、皮膚へのアプローチを表面からではなく内側から行いました。最も重要な皮膚の構造を理解するために、まず、シワ形成のメカニズムや筋肉との関係、圧力のかかり方にいたるまで検証しました。 」
「皮膚の内部構造さえ確実に理解できれば皮膚の表現はそれ程難しくはありません、Mariを使って思い通りの場所にシワを作ることができます。」
短納期への対応
SPIN VFX では適切なツールを使用することで、クライアントの要求に見合う高品質なCGの制作が可能になりましたが、納期についてはどのような対応がなされているのでしょうか。スーパーバイジング プロデューサーの Josa Porter 氏は次のように話します。「 制作期間の短縮は大きな課題の一つです。テレビの映像表現は映画と同等レベルまで向上していますが納期は厳しくなる一方で、準備や実制作、課題解決のプロセスは映画と大きく異なります。」
SPIN VFX はシームレスな連携が可能なツールを選択し必要に応じてパイプラインの拡張を図ることにより、課題の解決を図りました。「 柔軟性が高く拡張性に富んだKatana のようなライティング / ルックデベロップメント ツールをMari や Nuke と併用し、パイプラインの効率化を実現することにより、クライアントの高まるニーズに対応することができるようになりました。TVドラマシリーズの制作においては、スムーズな作業進行、アイディア検討の効率化、スピーディなフィードバックを図ることがきわめて重要です。」
こうしたツール間の相互接続性がアーティストの作業時間の短縮につながったと Cromie 氏は言います。「Mari のビューポートはKatana と同じHDRIでライティングしたテクスチャの表示が可能なため、アセットのテクスチャマップをすぐに確認することができ、データのやり取りにかかる膨大な時間を節約することができます。」
複数のショットを一度に扱えることも、短納期化への対応を可能にした要因であったと言います。「テレビ番組の制作は絶えず変更が加えられていくため、それらアップデートを全てのショット、シーンにおいて反映できる機能が必要です。」
「Katana の Graph State Variable は何百ものショットを同時に扱うことができ、シーケンス全体を一括で制御することが可能です。アーティストは一人で何十、何百ものショットをハンドリングできるため、クライアントもシーン全体を包括的に捉えることができるようになります。」そして「クライアントは、シーケンスの流れの中でライティングが正しいことを確認することができました。」Porter 氏は言います。
シーケンスを構築し、必要に応じて個々のショットの微調整を行います。シーケンス全体を扱いますのでレビューの回数が多くなるかもしれませんが、後のちライティングに変更が生じた場合も個別のショットファイルに戻る必要がなく、作業時間の短縮が可能です。」
「一般的なライティング / ルックデブツールでは、 クオリティや複数ショットの一括処理時のターンアラウンド スピードなどの点で、Katanaと同様の結果を得るのは不可能です。」McPhillips 氏は言います。
われわれ独自のパイプラインにKatanaを組み込むことで、ワークフローを最大限に効率化することができました。」
さらに、Katanaの特長であるシーンの読み込み速度の速さも作業時間の短縮に貢献したといいます。「ディファードローディングを活用すれば 、非常に重いシーンも容易に扱うことができ、ライティング作業を速やかに始めることができます。他のソフトウェアのように、シーンファイルに大量のジオメトリが読み込まれるのを待つ必要はありません。」
小規模スタジオの大きな可能性
結果的に SPIN VFX は他社に引けを取らない価格に加え、短納期で高品質なCG制作が行えるようになったことにより、入札できるプロジェクトの数が大幅に拡大しました。「他の中規模スタジオに比べるとSPIN VFX はライティングスタッフが比較的少ないのですが、1週間で数百ショットを仕上げて納品することができます。」McPhillips 氏は言います。
Porter 氏によれば、これはすなわち、大切にすべき作業により多くの時間を割くことができていることを示していると言います。「パイプラインの効率化により、今ではクリエイティブな作業により多くの時間を費やすことができるようになり、作品のクオリティを高めることができます。」
「作品制作の前提となる制作プロセスの見直しは、作品のレベルアップを図るチャンスにつながります。制作プロセスとパイプラインが整えられれば、高品質でクリエイティビティに溢れた、魅力的なショットを短時間で完成させることができるのです。」
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