Weta Digital - Katana導入でパイプラインの効率化を実現
アーティストとスーパーバイザーの双方に利点
近年Katanaは、大小問わず様々な規模のプロダクションに最適なライティング/ルックデベロップメントツールとしての地位を確立してきました。
ピクサー・アニメーション・スタジオのような大規模制作会社から、ジャカルタに拠点を置くCinemasphereのような小規模スタジオにいたるまで、近年急速に複雑化が進む映像制作の現場においてKatanaのスピードと拡張性が注目されています。
世界的なVFX制作会社のひとつ Weta Digitalでは1年ほど前にKatanaを導入、『移動都市/モータル・エンジン』や『アリータ: バトル・エンジェル』などのプロジェクトで使用しています。
同社でKatanaプロジェクトリードを務めるJonathan Swartz氏に、Katana採用のきっかけについて話を聞きました。
Katana導入の経緯
Katana の開発元であるソニー・ピクチャーズ・イメージワークスでキャリアをスタートしたSwartz氏は、その後2009年にWetaデジタルに移籍し『アバター』の制作に参加しました。
Wetaに入社以来 Katana導入によるメリットを社内の中心となって訴えてきたSwartz氏は言います。「SPIでの経験をもとに、Weta社内においてKatanaの認知を広める取り組みを行ってきました。そして多くの仲間の力を借りてKatanaのパイプライン構築を実現することができたのです。」
長年Wetaのライティングパイプラインは主としてMayaをベースに、独自のカスタムツールを構築してCGの高度・複雑化に対応してきました。Swartz氏は次のように説明します。「樹木や毛で覆われたキャラクター、レイアウトなど、規模の大きい複雑なCGアセットのデータを作業工程間でスムーズにやりとりするために、いくつものカスタムツールを構築してMayaを中心とした制作環境を整えてきました。
アセットは複雑で高精細化が進みレンダラーへのデータ受け渡しにも大変苦労してきました。アーティストが作業し易いアセットを準備する必要もあり、Mayaをビューポートに見立てながら大容量データのやり取りは10〜15年以上も続きました。」
時が経つにつれて、こうしたアプローチはパイプラインの複雑なもつれとなってワークフローの停滞を招くようになります。
「上流工程から下流工程へと連続的に開発工程が流れていく従来のウォーターフォール型のパイプラインは、前後工程が密接につながっているため、修正が発生した場合手戻りに大きなロスが生じます。プロダクションのどのステージにおいてもライティングアーティストが異なる工程からデータを受け取ることができて、大容量データをハンドリングできるプラットフォームが必要でした。」
クリエイティビティの回復
複雑なカスタムパイプラインを構築する際には、各工程においてアーティストがクリエイティブなアイディアをどれだけ自由に試せるか、ということが課題になります。
Swartz氏等はそうしたクリエイティビティを阻害する障壁を取り除きたいと考え、アーティストの作業プロセスを向上させる方法を探し求めました。
「理想とする新たなパイプラインでは異なるタイプのアセットのハンドリングにおいて、ライティングアーティストが他の工程まで把握して全て管理する仕組みか、もしくはプロジェクトごとにTDがショットの変更や修正に対応できる仕組みの構築です。
つまり、ライティングあるいはシーンアセンブリのプロセスで、ルックやライティングを一括管理できる手段を見出す必要があったのです。
従来のプロセスにおいては、アーティストがシーンに何が起こっているかを把握できず、何をどう進めれば良いか分からない状況でした。
新しいプロジェクトでは新たな課題に直面しますし、より複雑化する傾向にありますので、作業を開始する前にアセットがどのように作成されてきたか、どのように構成されてシーンで何が起こっているかを把握できるような仕組みが大変重要で、それを提供する必要がありました。
各工程において、アーティスト一人一人が自らの作業領域の中で作品のクオリティアップに取り組み、その点と点を繋ぎ合わせてくれるようなプラットフォームを求めていたのです。」
遅延読み込み機能の優位性
長編映画の大規模なパイプラインを考えるとき、最も大きな課題となるのが莫大な量のデータの扱いについてです。
非常に大きなアセットを扱う長編映画の制作においては、シーンの読み込みにかなりの時間をとられアーティストの貴重な作業時間が削られてしまい、生産性に大きな打撃をもたらします。
「テクスチャやジオメトリ、ヘアのキャッシュ、レイアウトの詳細など、我々の制作現場で扱うデータ量は膨大です。これまで社内の開発者によって優れたツールが数多く開発されてきましたが、巨大なシーンをどのようにロードして表示させるか、作業中のアーティストに最も適した方法については検討を重ねる必要がありました。」
こうしたことからSwartz氏はKatanaの導入を求めるようになります。Katanaは、アクセスするまでシーンの各部を読み込まない遅延読み込み機能によりプロジェクトファイルの読み込みに時間がかからず、ダウンタイムが発生しないためアーティストはクリエイティブな作業に集中することができます。
「アーティストはクリエイティビティに立ち返ることができるのです。」Swartz氏は言います。
「Katanaはあらゆるデータを任意のタイミングで読み込ませることができるので、アーティストはシーンを十分に検討して途中で読み込みを止めることも、ファイナルメッシュまで読み込んでテクスチャやシェーダーを確認することもできます。
また、プロキシだけを表示して他は閉じておくなど、作業に応じてカットオフをアーティスト自身でコントロールすることができます。
Katanaでは作品ごとの異なる課題に対してどのようにアプローチするか、アーティスト自身が判断することができるのです。」
スーパーバイザーとアーティストの関わり
Katanaはアーティストにとって利便性が高いだけではなく、スーパーバイザーにも大きなメリットをもたらしています。
経験のあるアーティストは若手アーティストに対して、より効果的な指導やアドバイスが行えるとSwartz氏は言います。「スーパーバイザーは各アーティストが担当するシーンのノードにアクセスして問題点を素早く確認することができるので、アイディアの共有やコミュニケーションが深まりました。
Katanaはシーンデータの読み込みに時間がかからず、作業プロセスや問題点の把握もしやすいため、必要な場合にはノードを確認してシーンを手直しすることも可能です。」
その結果、スーパーバイザーは重要なシーンに専念することができるとSwartz氏は説明します。「Katanaはダウンタイムによるロスなく作業に取り掛かれ、ノードアセットを共有してシーンの手直しも簡単に行えるため、優秀な人材の貴重な時間を無駄にすることなく効率的に作業を行うことができます。
Katanaのおかげで、定時に退社して翌朝映像を確認するといったことが可能になり、ワークライフバランスも大きく向上しました。」
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