UTS Animal Logic AcademyのMariを活用した短編アニメーション制作
UTS Animal Logic Academyは、30週間という限られた制作期間で短編アニメーションを完成させるために、3DテクスチャペインティングツールのMariを採用した。Mariの使いやすいノードベースのワークフローやKatanaとの連携、USDへの対応に加えて、Foundryチームから重要なサポートが提供される点が大きな魅力だった。
このアカデミーは、シドニー工科大学 (UTS) と、オーストラリアを代表するアニメーションスタジオであるAnimal Logicが共同で設立したもので、3DアニメーションやVFXに関する多彩なプログラムを提供している。実際のアニメーションスタジオのような環境で運営されているため、学生たちは自分の選択した専門分野でプロフェッショナルな経験を積無ことができ、将来のキャリアに備えることができる。
アカデミーの学生たちが制作した作品は、国内外の映画祭で数々の賞を受賞しており、卒業生の多くはILM、DNEG、そしてAnimal LogicといったトップVFXスタジオで活躍している。
Mariの導入は、さまざまな理由から自然な選択だった。UTS Animal Logic AcademyのCGリードであるRoss Anderson氏は、「私たちのシステムはLinuxとUSDをベースにしているため、OSやパイプラインと統合できるサーフェシングソフトウェアが必要でした。また、MariにはPixarのRenderMan用のプリセットマテリアルが用意されていることも、大きな助けになりました」と説明している。
Mariは、アカデミーの最新の学生プロジェクトである短編アニメーション『Alone』で重要な役割を果たした。この作品は、2023年のアニメーション/ビジュアライゼーション修士課程の学生たちによって制作された3Dアニメーションで、長い宇宙航行中に人間の乗組員が冬眠している間、孤独なロボットが日々の作業を懸命にこなす姿を描いている。孤独を感じた小さなアンドロイドは、余った部品を使って仲間を作り始めるが、計画通りにはいかないことが次第に明らかになる。
短編アニメーション 『Alone』の制作
学生たちは共同でストーリーを組み立て、アート、モデリング、リギング、アニメーション、プリビス/レイアウト、サーフェシング、エフェクト、ライティング、コンポジット、テクニカルディレクション、プロダクションコーディネーションなどの専門に分かれて作業を行い、わずか30週間で作品を完成させた。この30週間は、アカデミーの1学期と3学期に当たる期間で、学生たちは2学期に最新技術や革新的な技術を活用した別のプロジェクトに取り組むことになっている。
プロジェクトでは、モデリング担当の学生10名とサーフェシング担当の学生1名が、Mariを使用してアセットのテクスチャリングとシェーダー設定を行い、その後、チームはKatanaでLookDevを完成させた。190のアセット(2体のキャラクター、7つのセット、16のプロップ、176のセットピース)に対し、Mariを使って一人当たり約10~15アセットのテクスチャリングとサーフェシングを行った。与えられた時間内に映画を制作するため、約6~8週間でMariの操作に習熟する必要があった。
Foundryのサポート体制
「最初は、学生たちがMariのワークフローにできるだけ早く慣れるように、Foundry Learnのチュートリアルをたくさん活用しました」とAnderson氏は言う。「その後、Animal Logicから業界のメンターを招いて、学生たちと一緒に映画のためのアセットを準備しました」。
さらに、アカデミーがMariをスムーズに使い始められるように、Foundryは韓国および東南アジアのシニアクリエイティブスペシャリストであるBeomHee Leeによるバーチャルマスタークラスを実施した。
Anderson氏は次のように話す。「Foundryのマスタークラスは、セッションの前にサーフェシングチームから出された質問に対する解決策を中心に行われ、とても素晴らしい内容でした。その後、追加の質問もでき、講師がその場で回答してくれました」。
Mariで構築するロボットの世界
Mariのノードベースのワークフローがプロジェクトに効率性をもたらしただけでなく、Katanaとの連携やUSDへの対応も学生アーティストにとって重要な利点となった。
「USDを採用することで、テクスチャ更新から完全なLookDevターンテーブルレンダリングまで、わずか数回のクリックで迅速に行うことができました」とAnderson氏は言う。
MariとKatanaのUSDパイプラインは、アカデミーのテクニカルディレクター、Jonah Newton氏によって開発された。
特に便利な機能として挙げられるのが、MariのTeleportノードだ。これは、隠れたコネクションを通じてデータを転送し、ノードグラフを整理できるように設計されている。ノードグラフ上での視覚的な混乱を減らし、データをよりわかりやすく管理できて、さらに利便性も高まる。
ストーリーを補完するために、チームはMariを使用してアート部門が作成したビジュアルからポスターや壁画なども作成した。Mariでこれらを高解像度で扱うことができるため、テクスチャの細部を鮮明に保つことができた。
Mariによる課題解決
『Alone』における最大の挑戦のひとつは、控えめで非常に繊細なシェーディングを用いたミニマリストな美学を作り出すことだった。チームは、詳細なテクスチャに頼らず、他の手法で視覚的な興味を引きつける必要があった。テクスチャとシェーディングはライティングによって変化するため、ライティングを工夫し、シンプルなデザインでも視覚的に魅力的なシーンを作り上げた。
「MariでRenderManシェーダーを使用することで、アーティストは、Katanaでレンダリングする以前から最終的なレンダリング結果を視覚化できました」とAnderson氏は言う。「ノイズ (Noise) やクラウド (Cloud)などのプロシージャルノードも、微妙なサーフェスの変化を作り出すのに役立ちました」。
Mariのノードベースワークフローは効率的で、アーティストが期限内にプロジェクトを完成させる上で重要な役割を果たした。USD、Katana、RenderManとの連携により、LookDevにおけるシェーダーセットアップにかかる時間を大幅に短縮することができた。Katanaの.kifファイルをUSDに置き換えたことで、セットアップは大幅に効率化し、Mari のUSDエクスポート機能も大きく貢献した。
その結果、業界最高水準で制作された短編アニメーション映画が、指定された時間内に完成した。『Alone』の成功を受けて、アカデミーは今後のアニメーションプロジェクトでもMariとKatanaを引き続き使用する予定だ。「MariからKatanaへのUSDワークフローをさらに発展させ、最適化していくつもりです」とAnderson氏は話す。
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