ライティングパイプラインのベストプラクティス
前回の記事では、Katana導入によるパイプラインの摩擦解消について紹介した。本記事では、ワークフローのさらなる最適化を実現するKatanaのベストプラクティスと機能について、引き続き説明する。
導入に先立って、Katanaによって得られるメリットを最大化するために、プロジェクト全体の流れを検討することが重要だ。アーティストがより多くのショットに取り組み、すべてのプロジェクト、シーン、シークエンスで効果的にライティングできるように、部門を通して協力者が必要となる。
そのために、次の2つの点について確認しておかなければならない:
- ライティング作業に必要なアーティストの人数
- 上流工程からの作業の流れ
Katanaの可能性をパイプラインで完全に引き出すためには、各部門のスーパーバイザーたちと協力し、最適な制作スケジュールでプロジェクトを進行することがきわめて重要だ。Katanaを使った最初の作品であっても、予想よりも少ないアーティストで対応できたという話はよく耳にすることだが、導入に際して具体的にどのような準備をすればよいのだろうか。
パイプラインの準備
Katanaの導入にかかる時間は、既存のパイプラインの複雑さや必要な調整によって異なる。 FutureWorksのように、導入後1ヶ月以内に最初のプロジェクト制作を行ったスタジオもあれば、もっと長い時間を要する場合もある。すべてはセットアップ、ワークフロー、パイプラインに依存するが、このプロセスを短縮し、移行をよりスムーズに進めるためにできることがある。
メタデータやタグ付けを活用し、ライティングパイプラインにジオメトリキャッシュをフィードできるようになれば、移行プロセスを迅速かつ容易に行える。また、ショットを階層的に構築することで大規模なアセットにもスムーズに対応でき、アーティストの作業負担を大幅に軽減することが可能で、まさにKatanaの得意とするところだ。さらに、上流工程から下流工程、またその逆のアセットの受け渡し管理についても考えておくと良いだろう。また、ルックデベロップメントのマニフェストファイルとシーンレイアウトのマニフェトスファイルを分けておくと便利だ。
ジオメトリキャッシング以外にも、USDであれば、さまざまなアセットで構成される任意のシーンを確実かつスケーラブルにロードすることができる。USDを用いない場合は、KatanaルックファイルというKatana独自のルックデベロップメントのマニフェストファイルを利用することができる。
こうしたことを行わないと導入には若干時間がかかることになるが、統合が実現すれば、Katanaの恩恵を十分に享受できる。
Katanaの機能紹介
すべてのセットアップが完了し準備が整えば、いよいよKatanaの機能を利用することができる。独自のライティングツールはアーティストにとって便利で使いやすく、最高のユーザーエクスペリエンスを提供してくれる。
Nukeとの相互運用を可能にするNuke Bridgeの搭載により、ライティングワークはNukeコンプを通してプレビューできるようになった。Katanaのレンダリングは実行中のNukeにストリーミングされ、コンプされた結果はKatana上で直接確認できる。作業の精度向上や効率化に貢献する強力なワークフローと言える。
さらにKatanaは、Hydraビューポートを含むUSDテクノロジーを継続的に更新しており、出力結果は忠実で、インパクトのあるインタラクティブなフィードバックを提供する。USDのインポート/エクスポートノードを搭載しており、制作面において柔軟性とコラボレーションが強化される。 また、USDプラグインのソースコードはオープンソースで公開されている。
搭載されているKatana Foresight+ は、あらゆるパイプラインに対応する強力なクリエイティブワークフローを提供する。1つのKatanaプロジェクトファイル内で複数のショット、フレーム、またはアセットにわたって複数のイメージを同時にレンダリングできるようになり、さらにネットワーク上のマシンを利用すれば、アーティストに高速かつスケーラブルなフィードバックを提供し作業の効率化を実現する。シークエンス内のすべてのショットに影響を与えるあらゆる変更をライブで確認することができるため、ショットのクオリティの向上にもつながる。
本記事を参考に、是非既存パイプラインへのKatanaの導入をご検討ください。ご不明な点等ございましたら、お気軽にサポートまでご連絡ください。