Nuke Studioを使用したレビューワークフローの効率化
大規模かつクオリティの高いエピソードコンテンツが次々とリリースされる昨今、VFXスタジオは、過去作を凌ぐコンテンツを制作しなければならないプレッシャーに晒されながら、短納期、厳しい予算、さらに今日では在宅勤務移行への対応も迫られている。
約20年前にTom Turnbull氏とAnthony Paterson氏によって設立されたRocket Science VFX (RSVFX)は、『Halo』、『Wednesday』、『ロック&キー』、エミー賞ノミネートのドラマシリーズ『ザ・ボーイズ』などの作品を手がけ、業界での知名度は高い。
「私たちのビジョンは、使命感と先見性を持ったトップクラスの映画製作者やテレビ/映画作品との連携を見据え、クリエイティブなアイディアを実現する科学技術に重点を置いたVFXスタジオを作ることでした」とエグゼクティブVFX スーパーバイザーのAnthony Paterson氏は語る。
こうしたビジョンを実現すうえで、信頼できるレビューワークフローを持つことが必要不可欠であったなか、エピソードコンテンツ用の高品質なVFXを提供するために必要なツールとプロセスを備えたNuke Studioの採用は、チームのメンバーの多くがFoundry製品の長年のユーザーであったRSVFXにとって、ワークフローの効率性を維持する上で理に適っていた。
I/OスーパーバイザーのSteve Elliot氏は、次のように説明する。「Hieroがリリースされるまで、これに相当するような製品はなかったので、AppleのCompressorとDPX変換プラグインを組み合わせて、ソース映像からアーティスト用のイメージシークエンスを生成していました。Hieroは、フォルダ構造からバッチ命名に至るまであらゆるものを高度に制御し自動化できるため、それまでの手作業に比べ、大幅な効率化が実現しました。Hieroからの自然な流れで、Nuke Studioを使用することになったのです」。
「ほとんどのスタジオがそうであるように、我々もNukeベースのスタジオですから、タイムラインの使用と、コンプ作業時のNukeへの切り替えが一つのパッケージで行えるのは魅力的でした」。VFXスーパーバイザーのTom Plaskett氏は、さらに次のように続ける。「Nuke Studioは優れたバージョン管理機能と、タイムラインを瞬時に更新できる機能を備えています。タイムライン上に新しいトラックをいくつも作らなくても、ポップアップメニューを使用して全てのバージョンを簡単に切り替えることができるので効率的ですし、セットアップや編集、プレートの処理、デイリーレビュー、コンプショットの作成、QuickTimeのデリバリーなど、すべてを1つのパッケージで行うことができます」。
強力なエピソードコンテンツ制作ワークフローの構築
エピソードコンテンツを中心に扱うRSVFXは、シンプルかつ効果的なワークフローを求めていた。Nuke Studioは完成したエピソードから段階的に受け取ることができるので、ショットバージョンを始める前に、編集データを取り込んでプレートをコンフォームし、CDL(Color Decision List)やLUT(Lookup Table)を適用する。
「Nuke Studioは、制作をスムーズに開始できるように、こうした初期段階において色やカット時間の調整を行う際に役立ちます」とElliot氏は話す。
「編集でプレートを並べるのも、カラー情報を適用するのもすべてNuke Studioで行えます。各部門のバージョンごとに複数のトラックを作成し、レビュー時にその場で切り替えられるようにしています。各部門の最新バージョンでタイムラインを設定するので、試写室にいなくても最新の編集内容をエクスポートして確認することができます」。
高額な予算でCGIを多用する番組の人気が高まる中、複雑なショットが求められるのは珍しいことではない。
「ショットの複雑さは常に増大していますが、エピソードコンテンツの納期は長編映画のスケジュールよりも短いのが一般的で、バージョン管理を適切に行う必要があります。Nuke Studioはレイアウト、アニメーション、FX、コンポジティング、エクスポートの各バージョンで編集を維持し、すべてを最新の状態に保つことができます。コンプショットを作成して意思疎通を図ることができるので、クリエイティブプロセス全体を通して多用途に使用が可能です」。
「複数のエピソードの管理や調整も難しい課題です。エピソードごとに個別のプロジェクトを作成し、それらの間をすばやく行ったり来たりできるようにしています。プロジェクトを一貫した方法でレイアウトしているので、誰にとっても効率的でわかりやすいタイムラインになっています」とElliot氏は言う。
複数のベンダーがさまざまな番組を担当し、多数のショットを手がける状況下で、制作をスムーズに進めるためには、常に多数の異なる要素をきちんと管理することがきわめて重要だ。
「Nuke Studioの生産性をパイプラインで活用することで、作品を成功に導き、特に完全リモートのワークフローに移行しなければならなかった時に、コラボレーティブなレビュープロセスを確保することができました」とPaterson氏は言う。
未曾有の事態への対応
2020年の初め、多くのスタジオは在宅勤務に軸足を移し、新しい働き方への迅速な転換が求められた。それから2年、今でも多くのスタジオがこうしたリモート体制を継続している。
「リモートワークは、グループでのレビューに影響をもたらしました。Nuke Studioのタイムラインは常に最新の状態に保っていますが、オンライン会議では共有する動画をファイルでエクスポートする方が適していることがわかりました。画面共有は、各自のインターネットの接続状況によってラグが生じる場合があるので、Nuke Studioから再生するのではなく、さまざまなフォーマットで書き出すことにしました」とElliot氏は説明する。
Turnbull氏は、「高解像度で見る時はNuke Xに切り替えて、ショットに微調整を加えて影響を確認します。NukeXは実写プレートを扱うスタジオで多用されており、レンズディストーションやリタイミング、マッチグレードなどは必須の機能です」と話す。
Nuke Studioのおかげで、RSVFXは在宅勤務での作業スタイルに迅速に適応し、移行当初からアーティストたちは、それまで同様にリモートでの作業レビューを行うことができた。
「スタジオサーバー上にすべて置いてあるので、アーティストにプロジェクトファイルを渡してチェックさせることができますし、誰もがファイルにアクセスできます。最終納品時のチェックは、スタジオでCovidのプロトコルを使用し、フレームレベルでより詳細にモニターでレビューします。業界全体が、パンデミックに適応する必要がありました」とElliot氏は語る。
効率的なレビュープロセス
Turnbull氏によれば、タイムライン上での作業をワークフローに取り込むことができるNuke Studioは、エピソードコンテンツのレビュープロセスにおける有用性が高いという。
「ほとんどの場合、プロダクションからは最初からEXRフレームが提供されますが、稀に、カメラのRAWクリップが提供されることもあります。Nuke Studioは、フレームへの変換を簡単に行うことができるので、撮影した多くのフッテージをNuke Studioで処理し、プロダクションパイプラインに取り込みます」。
「コンフォームにNuke Studioを活用しています。Nuke Studioは、必要に応じて利用できる強力なインジェストツールを備えており、プロジェクトに必要なポストプロセスを簡単に実行することができます」とElliot氏が付け加える。
「タイムラインでカラーグレーディングやカラースペース変換をすばやく実行できるのは、大きなメリットです。リタイムコントロールは迅速かつ直感的で、ちょっとしたことではありますが、ビューアでフレーム番号とタイムコードの切り替えができる機能は、他のNLEにはない利点です」。
Nuke Studioのバージョン管理ツールは、RSVFXのチーム内で最もよく使われるツールの一つだ。利用可能なショットバージョンをすばやく特定してすべて表示することができるので、ネットワーク上を手作業で探し回る必要がなく、トラック数が減少し、タイムラインを整理された状態に保つことができる。
「バージョン管理は、間違いなく最高の機能です。フォルダ構造を探さなくても、ボタンを押すだけでショットの異なるバージョンに切り替えられるので、本当に便利です。また、タイムラインから使用するすべてのノードを含むNukeスクリプトをアーティストにプッシュできる点も魅力です。Nukeスクリプトを使って作業を行っているアーティストは、レンダリングをタイムラインに同期させることができます」とTurnbull氏は話す。
作業効率性の向上
「Nuke Studioは、新人アーティストでもすぐに使いこなせる直感的なアプリケーションです。フローティングライセンスは、地理的な制約を受けずにプロジェクトにアクセスできるので、昨今のリモートワークフローに最適です。Nuke Studioの機能セットは特にVFX向けに設計されているので、他のNLEに含まれていないコントロールや、深いメニューに隠れているコントロールを探す必要はありません」とElliot氏。
Turnbull氏は、「Nuke Studioにはすぐに使える機能が多く、我々のような小規模スタジオには最適です。プログラムをインストールすれば、すぐにレビューを始めることができます。さまざまなカラーパイプライン、メディアのインポート/エクスポート、タイムラインの管理、複数のレンダリングの確認に1か所で対応できるツールを求めていた私たちにとって、Nuke Studioはすべての条件を満たす選択肢でした」と話す。